着物生地の主な素材や織り方と染め方の違いによる生地の種類を解説!

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着物に使われる生地は、同じ素材であっても織り方・染め方によって呼び方が異なります。それぞれに特徴があり、着物の用途や時期を決定づけているのです。本記事では、着物生地の主な素材や織り方と染め方の違いによる生地の種類について解説します。また、着物生地を長持ちさせる保管方法も合わせてご紹介します。

着物生地の主な素材

着物生地の素材は、大きく分けて天然繊維と化学繊維の2つに分類されます。そのうち天然素材は、絹・麻・木綿・ウール、化学繊維は主にポリエステルです。これらの素材は、着物の用途や季節によって使い分けられています。それぞれの着物生地の素材について解説します。

正絹:フォーマルな着物に使われる最高級の生地

正絹(しょうけん)とは、経糸(たて)緯糸(よこ)とも蚕の繭から採った絹糸で織られた絹100%の生地素材です。最高級の生地素材のため振袖や留袖、訪問着などのフォーマルな着物のほとんどが正絹で、小紋や色無地といったインフォーマルな着物まで幅広く使われています。なめらかな肌触りと美しい光沢が特徴で、通気性や保湿性にすぐれ、一年を通して快適に着ることができます。

麻:主に夏用普段着の着物に使われる

着物に使われる麻は、苧麻(ちょま:イラクサ科の多年草)から採れる繊維のことです。苧麻の糸は天然植物繊維の中で最高の強度があります。苧麻の歴史は古く、弥生時代には現在でも再現が難しい高度な織物が作られていたといわれています。フォーマルには着用できず、あくまで普段着やちょっとしたお出かけ向けの着物生地です。織り方によっては、盛夏だけでなく、6月と9月といった単衣(ひとえ:裏地のない着物)の時期にも着ることができます。

参考:ラミー(苧麻)について|日本麻紡績協会

木綿:普段着の着物として幅広く使われる

木綿は、綿花を糸状に紡いだ糸で作られる生地素材です。繊維が太く丈夫で、吸湿性や通気性に優れているため、単衣の着物に使われています。絣(かすり:織り技法の1つ)生地としても知られ、温かみのある素朴な風合いが魅力です。真夏以外の季節において、普段着やちょっとしたお出かけ向けとして、最も親しまれています。

ウール:冬用普段着の着物に多く使われている

ウールは、羊毛から作られた着物の生地素材です。厚手で保温性が高く、主に冬の普段着に多く使われています。羽織と合わせたアンサンブルは、お正月の衣装として親しまれています。寒い季節に着用するイメージが強いウールは、もちろん盛夏には向いていませんが、春夏向けに薄地のサマーウールもあり、季節を問わず楽しめる生地なのです。

化学繊維:フォーマルな着物にも使える高級素材もある

化学繊維とは、人工的に作られた繊維の総称です。着物生地に使われる化学繊維は、ポリエステルが主流となっています。絹を人工的に作ることから化学繊維の研究がはじまり、現在では絹と区別がつきにくい高級ポリエステルが開発されました。そのため、普段着をはじめ、訪問着などフォーマルな着物生地にも使われるほどです。

織り方の違いによる着物生地15種類

着物の生地にはさまざまな種類があり、同じ素材でも織り方の違いによって呼び方が変わり、それぞれ特徴があります。ここでは、まず基本の織物組織である平織・綾織・繻子織に綟り組織を加えた四原組織について説明し、これらの織り方の違いによる代表的な15種類の着物生地をご紹介します。

織物の織物組織

着物生地は経糸と緯糸を交差させて作られ、この交差するパターンのことを織物組織といいます。基本的な織物組織は、平織・綾織・繻子織(しゅすおり)の三原組織に、近年は四原組織といって綟り織(もじりおり)を加えることもあります。これらのパターンを変化・応用することで、生地の厚さや目の細かさ、風合いといった特徴を生み出すのです。

平織

経糸と緯糸の2本で交互に1本ごとに浮き沈みさせる織物組織です。平織の組織図にあるように糸が交差する点が多いため、緻密で丈夫な生地に織り上がります。最も基本的で単純な織り方のため、多くの着物生地に使われています。平織を応用し、経糸と緯糸を2本もしくはそれ以上の本数を束にしたものを斜子織(ななこおり)といいます。

<平織の組織図>

引用:平織|Wikipedia

綾織

経糸が2本もしくは3本の緯糸の上を通した後、1本の緯糸の下をくぐらせることを繰り返す織物組織です。表面は斜めに向かって右上がりもしくは左上がりにずれて配列されるため、斜めの織線が浮き上がります。斜め方向におうとつのある模様ができることから、斜文織りとも呼ばれます。デニムの織り方でもあり、伸縮性に優れていることが特徴です。

<綾織の組織図>

引用:綾織|Wikipedia

繻子織

経糸と緯糸が5本以上から構成され、経糸または緯糸を長く浮かせた織物組織です。経糸と緯糸の交差する点が少ないため、なめらかで光沢があることが特徴です。表面に経糸が多く出ているものを経繻子(表繻子)、対して緯糸が多く出ているものを緯繻子(裏繻子)と呼ばれます。また、糸の数によって五枚繻子、八枚繻子にも分けられます。サテンの織り方でもあり、引っ掛けに弱いということが難点です。

<繻子織の一種「本繻子」>

引用:朱子織|Wikipedia

綟り織

2本の経糸をもじりながら緯糸を打ち込んだ織物組織です。もじることでハリのある質感と立体感のある生地に織り上がります。経糸が絡むことから、絡み織(からみおり)とも呼ばれます。網目状の透けたすき間が生じるため、通気性にすぐれ、特に斜め方向の伸びが良いことが特徴です。

綟り織の組織図>

引用:絡み織(捩り織)|Wikipedia

1.紋意匠

紋意匠(もんいしょう)は、絹で作られた緯糸を二重にして、地紋(織で表現した模様)が浮き出るちりめん生地のことで、近年では高級ポリエステルでも作られています。無地染めやぼかし染めに多く用いられ、染めると立体感のある地紋が特徴です。色無地や色留袖に最適で、訪問着、付下げ、小紋などに使用されています。日本最大の絹織物産地である京都府の丹後地方で作られる丹後ちりめん(大半は、紋意匠ちりめん)が有名です。

2.一越

一越(ひとこし)は、強く撚った絹糸を使い、1本ずつ左右交互に打ち込んで織り上げたちりめん生地のことです。撚りをかけた緯糸を「越」と呼び、一越と二越(ふたこし)があります。非常に細かいシボ(表面の凹凸部分)が特徴です。留袖、訪問着といったフォーマルな着物から付下げ、小紋など幅広く使われます。

 3.ちりめん

ちりめんは、撚りのない経糸と緯糸に右回りと左回りに撚られた2種類の緯糸を交互に織り込まれた生地のことです。セリシン(膠質)や汚れを洗い流す「精錬」を行うことで、生地が縮んでシボが現れます。もともと絹で作られた糸を使いますが、綿糸(綿ちりめん)やポリエステルやレーヨンでも織られています。京都府の丹後ちりめんや滋賀県の浜ちりめんが有名です。

4.羽二重

羽二重(はぶたえ)は、撚りのない経糸・緯糸を使って織られる白生地のことで、特に絹で織られたものを光絹(こうきぬ)と呼びます。非常に細い経糸を2本使った平織なので、縮みがなくなめらかな肌ざわりに加えて光沢感が特徴です。厚手のものは留袖や喪服などに、薄手に織られたものは着物の裏地にも使われます。

5.綸子

綸子(りんず)は、経糸・緯糸ともに撚りのない絹糸を使い、繻子織で織り上げられた生地のことです。通常の糸よりも強く撚った糸で織るとシボが現れ、これを綸子ちりめんといって、手描き友禅などの高級着物に用いられます。また、地紋があるものを紋綸子と呼び、打掛や振袖、訪問着に使われます。生地は薄く、柔らかく滑らかな肌触りで、強い光沢があります。そのため、黒留袖や喪服には用いません。

6.緞子

緞子(どんす)は、あらかじめ染色した糸を使い、経糸や緯糸の色を変えて多色の模様を織り出す繻子織の高級織物です。 一般的には、経糸と緯糸を5本ずつ使う五枚繻子ですが。六枚緞子もあります。また、金箔や金糸を使って地と模様を織り出したものを「金襴緞子(きんらんどんす)」、紗の生地に織られたものを「金紗(きんしゃ)」と呼ばれ、厚手で重量感があり、なおかつ華やかな印象になります。打掛や帯地に使われています。

7.紬

紬(つむぎ)は、繭を綿状にして糸を紡いだ紬糸を染色し、平織りした生地を指します。多くは絹糸で作られ、絹独特の光沢感が出ることが特徴です。大島紬は絹100%で、結城紬のように綿で作られるものもあります。耐久性に優れていることから、古くから普段着として使われており、フォーマルな着物には不向きです。

8.銘仙

銘仙(めいせん)は、平織の絹織物です。もともと大正から昭和初期の女性の普段着に使われていましたが、現代ではおしゃれ着としても人気があります。通常の平織りでは、経糸と緯糸を交互に組み合わせて織られますが、あえてずらしながら織ることで、全体にぼやけたようにみえる絣(かすり)の技法が用いられていることが特徴です。産地は埼玉県秩父市、群馬県伊勢崎市が有名です。

9.絽

絽(ろ)は、2本の経糸を緯糸に打ち込むという織り方で、平織と綟り織を組み合わせて絹で作られる生地です。透け感のある生地が特徴で、見た目にも涼しい夏向けの着物生地で、盛夏を中心とした夏季はもちろん、単衣の季節とされる6月や9月にも着ることができます。また、フォーマルの着物に適しており、留袖や訪問着、小紋、色無地に使われています。

10.紗

紗(しゃ)は、1本の緯糸に対して強く撚った経糸を2本ずつ絡ませて織り上げた生地です。透ける部分と平織りの透けない部分の組み合わせで、紋様を織りだしたものを紋紗(もんしゃ)と呼びます。絽に比べて全体に透け感があるため、盛夏に適しており、セミフォーマルにおけるおしゃれ着の着物に使われます。

11.羅

羅(ら)は、経糸4本1組にして複雑にからませ、その間を真っ直ぐに緯糸が通るといった綟織りのなかでは最も古くからある織り方です。その複雑さから室町時代に途絶えたものの、昭和になり復元したとして、北村武資氏が人間国宝として認定されました。経糸が斜めに交差することでできる菱型の文様が特徴です。夏の普段着の着物生地として使うことができますが、帯や羽織に使われることが一般的になっています。

12.御召

御召(おめし)とは、経糸・緯糸とも強く撚られた先染めの糸(御召糸)で織り上げた平織の生地です。生地表面にある細かいシボが特徴です。ちょっとしたお出かけに着る着物生地に使われます。縞柄を織り出した縞御召(しまおめし)が典型的な御召で、紬糸(つむぎいと:真綿から引き出した糸)を織り込んだ上代御召は織りの最高級といわれています。産地は、京都府の西陣御召(にしじんおめし)や新潟県の塩沢御召(しおざわおめし)、山形県の白鷹御召(しらたかおめし)が有名です。

13.縮み

縮(ちぢみ)は、撚りの強い緯糸で平織りし、温湯でもみ縮ませてシボを出した生地です。素材は麻や木綿、絹、合成繊維などがあります。主に、夏のおしゃれ着や浴衣の生地に使われます。兵庫県の明石縮、新潟県の小千谷縮(おじやちぢみ)、石川県の能登縮が有名です。

14.絣

絣(かすり)は、あらかじめ染め分けた糸を経糸と緯糸に用いて、平織もしくは綾織や繻子織で織り上げた生地です。日常着やちょっとしたお出かけの着物生地に使われます。綿で作られたものには福岡県の久留米絣、愛媛県の伊予絣、広島県の備後絣があります。

15.上布

上布(じょうふ)は、苧麻や大麻から手紡ぎした細い麻糸を平織して織られた麻生地のことです。現在では、苧麻などを機械で紡いだ機械紡績糸や絹、綿、化学繊維で作られた生地も上布と呼ばれています。麻ならではのさわやかな肌触りが特徴です。盛夏に着る普段着やおしゃれ着の着物生地に使われています。産地は越後上布(新潟県)や近江上布(滋賀県)、能登上布(石川県)が有名です。

参考:「染と織」地域別辞典|一般社団法人民族衣裳文化普及協会 

染め方の違いによる着物生地10種類

生地は、染色するタイミングで先染めと後染めの2種類に分けられます。染めるタイミングが違うだけで、生地の仕上がりや風合いなどが異なるのです。ここでは、基本の染め方と染めに使われる染料、染め方の違いによる主な着物生地10種類について解説します。

基本の染め方

着物生地の染め方には先染めと後染めがあり、先染めの着物を「織りの着物」、後染めの着物を「染めの着物」ともいいます。織りの着物には紬や御召があり、おしゃれ着や普段着の着物生地に使われます。一方、染めの着物には振袖、留袖、訪問着、色無地、付下げがあり、格式の高い場所で着用する着物生地に使われることも多いです。このように、染め方の違いによって目的や用途が変わります。

先染め

先染めとは、糸の状態で染めることです。それとは別に、糸になる前の繊維の束の状態で染める「トップ染め」も先染めの1つとなります。織り上げた後の図柄を計算し製作するため、熟練した技術を必要とするうえに、手間と時間がかかります。

先染めの生地は、糸や繊維の状態で染めるため染料が糸の中心部までしっかり吸着します。その結果、色あせしにくくなり、深みのある色合いを長く保てるのです。裏表がないため、汚れると裏返して仕立て直しができることも、着物の変わらない色合いを楽しむことにつながるのでしょう。 

参考文献:滝沢 静江著『着物の織りと染めがわかる事典』日本実業出版社

後染め

後染めとは、染めていない糸で織り上げた白生地に染色することです。そして、後染めには白生地を染料に浸して染色する浸染(しんぜん)と型紙を使って染色する捺染(なっせん)の2種類があります。

後から染めるため、華やかな色合いを出すことができます。後染めの生地は、先染めに比べて色が定着しにくく、色移りしやすい可能性があります。そのため、色が入り込むのを防ぐために彩色された部分を糊伏せしたり、防染糊を置いて模様を白く抜くといったさまざま技法が施されているのです。

参考文献:滝沢 静江著『着物の織りと染めがわかる事典』日本実業出版社

染料の種類

着物に使われる染料は、化学染料と天然染料の2種類です。化学染料が用いられるようになるまで、草木染めをはじめとした植物由来の天然染料が使われていました。化学染料が導入されて、それまでになかった色が出せるようになり、着物の色合いが豊かになっていったのです。では、化学染料や天然染料とは具体的にどのようなものでしょうか。それぞれ詳しく解説します。

化学染料

化学染料とは、石油などの原料から化学的に合成された染料のことです。日本に輸入されるようになったのは江戸末期で、紫粉(メチールバイオレット)・紅粉(マゼンダ)・紺粉(ソルブルブルー)などの数種類でした。一般に普及し始めたのは明治時代に入ってからです。

化学染料が普及したのは、色数が多い、発色が鮮明、安定して同じ色に染まる、色落ちしないなどの理由があったためです。化学染料を使うことによって、単色から彩色へ、細かな文様への染色など染色技法を向上させることにつながったのです。

参考:文様の歴史|京都工芸染匠協同組合

天然染料

天然染料とは、天然原料から採れるものを指し、動物や植物、鉱物に由来する染料のことです。主な原料として、植物由来のものには茜やウコンの根、紅花の花、蘇芳(すおう:マメ科ジャケツイバラ亜科の小高木)の幹、桑の樹皮、藍の葉など、動物由来のものにはイボニシ(巻貝の一種)から採れる貝紫(かいむらさき)、えんじ虫(カイガラムシ科の昆虫)から採れるコチニールなどがあります。鉱物由来のものは、大島紬を染めるのに使う泥です。

天然染料の原料は、限られた時期に限られた量しかとることができません。採集から染料を作るまでに、とにかく手間と時間がかかります。同じ原料であっても、同じ色味を再現し量産することも難しいのです。しかし、自然由来なので長く使い続けるなかで、習慣的に安全性が確認されています。さらに、藍には防虫・防菌効果にすぐれていることが科学的にも実証され、化学染料にはないメリットといえるでしょう。

参考:染料の昔と今|The Chemical Society of Japan

1.絣染め

絣(かすり)染めは、あらかじめ染め分けた絣糸を使って織り上げる先染めの技法です。絣糸とは、糸の白く染め残す部分を糸でくくるか、板で締め付けるなどしてから染色し、あえて染め残しを作った糸を指します。この絣糸を用いて平織もしくは綾織や繻子織で織り上げることで、交差部分が白くなるようにして柄や模様を作り出していきます。絣の種類は新潟県の十日町絣、広島県の備後絣、岡山県の作州絣などが有名です。

2.友禅染め

友禅染めは、糊を使って染料のにじみを防ぐ糊置き防染法による後染めの技法です。模様の輪郭に沿って糸目糊(いとめのり)をぬり、隣り合う色が混じるのを防いでから文様を染め描きます。もとは、友禅といえば手描き友禅といって職人によって直接描いていましたが、模様の型を使う型染めも行われています。友禅染めの種類は、京都府の京友禅、石川県の加賀友禅、東京都の江戸友禅などが有名です。

3.絞り染め

絞り(しぼり)染めは、白生地の一部をつまみ糸でくくるなどしてから染料に浸すという後染めの技法です。括り染めとも呼ばれています。つまんだ部分を白く残すことで、絞り独特の立体的なシワの文様を作ります。生地全体を細かく絞ったものを総絞りといい、絹生地であれば高価な逸品です。また、小鹿の背のまだらに似ている鹿の子絞りもあります。絞りの種類は、愛知県の有松絞り・鳴海絞り、京都府の京鹿の子絞り、秋田県の三浦絞りなどが有名です。

4.小紋染め

小紋(こもん)染めは、白生地に繊細な文様を糊を置き、色が混じるのを防いで染色していく後染めの技法です。また、小紋染めにみられる生地全体の細かな文様は、型紙を使って染められます。小紋といえば細かな文様を称していましたが、現在では大きな柄であっても文様が繰り返されていれば小紋とみなされています。小紋染めの種類は、京都府の京小紋、石川県の加賀小紋、東京都の江戸小紋などが有名です。

5.型染め

型染めとは、型紙を使って生地に模様をつける、後染め技法の総称です。三角形や円形、線などのさまざまな図形を繰り返す幾何学模様が特徴で、鮫肌のような細かい模様の「鮫」、小さなドット柄「行儀」、小さな正方形が縦横に連続する「通し」の3つが格式の高い文様です。型染めの技法は、東京都の江戸小紋、京都府の京友禅、沖縄県の琉球びんがた紅型、岩手県の南部古代型染などに使われています。

6.ろうけつ染め

ろうけつ染めは、日本古代の染色技法である三纈(さんけち)の1つ、臈纈染め(ろうけち)のことです。ろうけつ染めは、溶かしたろうを筆にとって生地に模様を描き、その上から染料で染めていきます。ろうが付いた部分は染まらず、それ以外が模様として染まる染色技法です。平安時代に廃れてしまいますが、明治時代から復活しました。現在では友禅染めに用いられ、京都の京友禅にろうけつ友禅があります。

7.墨流し染め

墨流し染めとは、水面に墨汁や顔料と油と交互に落とした際にできる波紋の模様を生地に写しとる後染めの技法です。やり直しの効かない唯一無二の染めでもあります。染色技術の第一人者である薗部正典氏によって、新たな技術が完成し、水に溶けにくい染料が開発されるなど、現代的な墨流しが受け継がれています。現在では、正絹の着物にもその技法が用いられています。

8.ろうたたき染め

ろうたたき染めとは、溶かしたろうを筆もしくは刷毛などに含ませてたたき、ろうの飛沫を生地に落とす防染方法による後染めの技法です。ろうの飛沫部分は染まらないため、不規則な点状の模様が描かれます。たたきと染めを何度も繰り返すことで、濃淡が現れ独特の風合いが特徴です。

9.辻が花染め

辻が花染めとは、奈良時代から伝統的に続く絞り染めによる後染めの技法です。絞り染めのほかに、生地をくくって染めるものから、絵模様の輪郭を縫い絞って多色に染め分けたものなど、高度で複雑な技術を必要とします。桃山~江戸時代初期に最盛期を迎え、友禅染めの発達とともに衰退しますが、昭和60年代に久保田一竹氏によって「一竹辻が花」が発表されました。量産されなかったため現存する数も少なく、辻が花染めは幻の染めともいわれています。

参考:辻が花について|辻が花染め工房絵絞庵

10.草木染め

草木染めとは、天然染料のうち草や木、花などから採取した材料を用いた後染めの染色技法の総称です。繊維を染まりやすく、染色濃度を上げるために、媒染作業を行います。手間はかかりますが、天然染料ならではの色合いを出すことができます。春は桜の木染、夏は藍染、秋は紅花染め、柿渋染めが行われます。草木染めの種類は、東京都八丈島でコブナグサ、タブノキ、シイ、マダミなど使用した本場黄八丈(ほんばきはちじょう)や山形県米沢市で藍、紅、紫根、茜、桜などを使用した草木染め紬が有名です。

参考:「染と織」地域別辞典|一般社団法人民族衣裳文化普及協会 

着物生地を長持ちさせる保管方法

着物生地は、正しいお手入れがされていれば長持ちします。着用後のお手入れを間違えていたり、着ないからといってタンスに入れたままにしていては、着られない状態になってしまうかもしれません。手間がかかっても日頃からのお手入れは大切です。ここでは、着物生地を長持ちさせる保管方法について解説します。

着用後は陰干しする

着用後の着物は、きもの用ハンガーにかけて必ず陰干しをしましょう。湿気を含んだままタンスにしまうとカビや黄ばみの原因になります。直射日光や窓の近くを避けて、一晩ほどつるすのが理想的です。風通しのよい部屋であれば、数時間程度でも効果があります。湿度が高い時期は、エアコンや扇風機を利用するのもよいでしょう。

ほこりや汚れをとる

陰干しをした後は、タオルやブラシを使ってほこりを払いましょう。また、汚れがあれば硬く絞ったタオルで拭き取っておきます。ほこりや汚れをとる際には、決して擦ってはいけません。特に刺繡や金銀箔は丁寧に扱うようにします。目立つ汚れは、できるだけ早く購入した店舗もしくは着物専門のクリーニングに相談してみてください。

長方形になるよう正しくたたむ

最終的に長方形になるように正しくたたみます。着物の基本的なたたみ方は「本だたみ」です。縫い線に沿ってたためばよいので、チャレンジしてみてください。

本だたみは以下の手順で進めます。

<本たたみの手順>

①下前の袵(おくみ)を袵線(脇縫いの縫い目)で手前に折り返す

②上前の襟(えり)と袵を下前に合わせて重ねる

③左右の身頃と袖を重ねる

④左袖を身頃の上に折り返す

➄身頃の丈を2つ折りにする

⑥着物を向こう側に返し、右袖を身頃に重ねる

⑦さらに小さくたたむ(たとう紙や収納場所に収まるサイズに合わせる)

参考:着物のたたみ方|京染卸商業組合

保管するときは湿気を避ける

保管するときは湿気を避けることが大切です。正しくたたんだ後は、たとう紙に包んで収納します。着物の収納は桐タンスが良いといわれますが、持っていないという方もいらっしゃるでしょう。ステンレスやポリ容器は通気性が悪く、段ボールは湿気を吸いやすいため、どちらも着物の収納には向いていません。防湿効果がある桐の衣装ケースが適しています。

着物用の防虫剤を使う

着物をタンスや衣装ケースに収納する際に、着物用の防虫剤を使いましょう。その際、種類の異なる防虫剤を併用するのは危険です。化学反応を起こすおそれがあり、シミや変色の原因になることがあります。メーカーや種類を統一して入れるようにしましょう。また、着物に直接触れないようにして、たとう紙の四隅に置きます。また、防虫剤は少なくとも1年に1回の交換が必要です。

定期的に虫干しをする

着物は、定期的に虫干しをして湿気を払います。収納したままの着物は、乾燥剤を入れていたとしても湿気はたまりがちだからです。カビや変色、虫食いなどの点検を兼ねて、1年に1度は虫干しをしましょう。

虫干しに適した時期は、土用干し(7月下旬〜8月下旬)、虫干し(10月下旬〜11月下旬)、寒干し(1月下旬〜2月下旬)の3回です。雨の翌日を避けて、乾燥している日に正午をはさんだ時間帯で4~5時間ほど陰干しするのが効果的です。着物の虫干しと同時にたとう紙を交換したり、タンスの引き出しや衣装ケースもほこりをはらい乾燥させましょう。

着物生地を売るなら知っておくべきポイント

着物生地を手放すか検討している方もいらっしゃるかと思います。着物生地を売るなら、少しでも高く売りたいと考える方は多いでしょう。ここでは、着物生地を売るなら知っておくべきポイントをご紹介します。売却において大切な情報ですから、確認しておきましょう。

状態が良いもの

当然のことですが、着物生地を売るなら状態の良いものが高く売れます。保存状態や保管方法は売却する際の価格に大きく影響するため、汚れやカビ、変色、虫食いなどはマイナスポイントです。やはり、日頃のお手入れや保管方法は重要になります。今一度、手元にある着物の状態を確認しましょう。

正絹である

正絹(しょうけん)の着物生地も高値につながりやすいです。絹で織られた生地は高級とされ、なかでも絹100%で織られた正絹の生地は、留袖や色留袖、振袖、訪問着といったフォーマルな場面で着用する着物に用いられ、高値で売却される傾向にあります。また、使用用途が幅広い訪問着も人気があります。文様や刺繍に金銀糸、金銀箔が施されている高級品は、手間をかけて作られている分、高く売却できる可能性があります。

有名作家物の落款がある

有名作家が手がけた着物生地には、落款が刻印されています。落款とは、着物の作者を示す印鑑のようなものです。落款は、おくみ(襟から裾 までの細長い半幅 の布)もしくは衿先にあります。量産されていない生地ですから希少性も高く、購入価格も通常の着物よりも高価ですから、有名な着物作家の落款があれば高値で売却できるでしょう。ただし、落款の真偽の見分けは困難ということもあるため、目利きのできる業者に依頼するのが良いでしょう。

有名産地の証紙がついている

大島紬、京友禅、加賀友禅など有名産地の着物生地には、産地の証明や品質の証となる証紙(商標登録)がついています。具体的には、作家・産地・染め方・織り方・素材などが記されています。

例えば、大島紬の場合は手織りもしくは機械織りによって証紙に違いがあります。

<鹿児島県奄美大島産「本場奄美大島紬」手織り>

引用:本場奄美大島紬の証明|本場奄美大島紬協同組合

<鹿児島県奄美大島産「本場奄美大島紬」機械織り>

引用:本場奄美大島紬の証明|本場奄美大島紬協同組合

同じ種類の素材を使っていても、上記のように染め方や織り方が異なるため、証紙の違いで生地の情報を知ることができます。売却では、証紙がついていることで本物であることが証明できるため、買い手から高評価を得ることができます。売却の際には、着物生地と合わせて準備しておきましょう。

仕立てていない着物生地(反物)も売ることができる

仕立てていない着物生地は未着用品であり、あらゆるサイズの人に合わせて新たに仕立てることができるため、売却することも十分可能です。着物生地の主な素材は、正絹、木綿、麻、ウール、化学繊維があります。すでにご紹介した通り、高級な素材は絹で、なかでも絹100%の正絹(しょうけん)が最高級品です。反物の重さが重いほど、絹を多く使っているため高値での売却につながります。また、伝統工芸品の結城紬や大島紬も価値が高く、証紙がついていれば、無い場合より高額で売却が期待できるでしょう。

新品・未使用の着物

購入してから1度も着用していない場合は、しつけ糸をとらずたとう紙に包んでおきましょう。未使用であることを示すのが重要になるからです。新品とほぼ同じような状態であれば、需要が期待できるため高値で売却できる可能性があります。その際に、シワがない状態で保管されていることが重要です。シワを防ぐ布や紙を挟んでおくのも効果があります。購入から年数が経過している場合は、変色や虫食いがないか確認しましょう。日頃からのお手入れや保管を徹底しておく必要があります。

複数の着物専門買取業者に見積りを出してもらう

着物生地を売却するなら、その価値を正当に鑑定できる着物専門買取業者に依頼すべきです。さらに、少しでも高く売るためには、複数の業者から見積りを出してもらい、比較検討しましょう。それとは別に、手元にある着物生地の市場価値をあらかじめ調べておくことも必要です。その上で、提示された金額と比較し、疑問があれば説明を求めて、納得できる業者に売却することが、最終的に最も高い金額で売ることにつながります。

最後に

本記事では、着物生地の主な素材や織り方と染め方の違いによる生地の種類、着物生地を長持ちさせる保管方法、売却の際のポイントについて解説しました。着物生地の素材は、織り方や染め方の違いによってさまざまな種類があります。また、着物を長持ちさせるためには、着用後の正しいお手入れと湿気を取り除いて適切に保管し、定期的に虫干しを行いましょう。着物生地を長く楽しむためにも売却するためにも、お手入れや保管の仕方は大きく影響します。もし、売却を考えるのであれば、本記事で紹介した売却のポイントをぜひ参考にしてみてください。

 

この記事を書いた人

着物買取のてびき編集部

はじめての着物買取で生じる様々な疑問にお答えできるメディア「着物買取のてびき」を運営する編集部です。着物の正しい知識とリアルな体験談を主軸に情報をお届けします。